『桃太郎 海の神兵』瀬尾光世
「桃太郎 海の神兵」瀬尾光世/日本/1945
タイトルと時代から察する通り、戦意高揚映画なのだけれども、
とても興味深い作品。
主人公は昔話のヒーローである桃太郎です。
桃太郎は日本画の中に描かれる天草四郎のように、凛々しく丹精な顔立ちをしています。
しかし、桃太郎以外はみんな動物なんです。
動物たちは、のらくろや、フクちゃんのような、キャラクター化された可愛らしい描かれ方をしていますが、
アップになると、時折桃太郎のような凛々しい顔立ちになることがあり、その違和感や表情にドキッとする。(あの顔は、キメ顔なのかしら?)
また、全編通して風を感じることができるのが特徴的で、
セーラー服の襟が、桃太郎の前髪が、国旗がふわっとなびき、
常に心地の良い風が吹き抜けていきます。
個人的に好きなシーンは、中盤の「アイウエオ」の唄のくだり。
侵略した土地で現地の人に日本語を教える、という、
今思うと不謹慎なシーンだけれど、
ほとんど「ア・イ・ウ・エ・オ」の5文字だけで進むこののシーンは
戦意高揚映画とは思えないほどおおらかで、のどかで、平和に見えます。
しかし、心で楽しいと思っても、頭のどこかで道徳的にせつないと考えてしまうシーンです。
今朝、
「桃太郎 海の神兵」がカンヌで上映されたという記事を見て、
久々に見たくなったので、
実はコレ、短編じゃないんですが、是非。