『インク壺の外へ』マックス・フライシャー
『インク壺の外へ』マックス・フライシャー/アメリカ/1919
Out Of TheInkwell (Max Fleischer)
ベティブープやポパイシリーズでおなじみのフライシャースタジオが制作した初期の作品。
後に人気シリーズになる道化師ココの初出演作品。ココの滑らかでユーモラスな動きは、「ロトスコープ」の技法で描かれている。
「悪の華」「花とアリス殺人事件」その他アート系のアニメーションでも多く取り入れられ、今をときめくロトスコープは、このフライシャースタジオによって開発された歴史深い技法であり、なんと今から100年近く前に発明されている。
それはさて置き、この作品が素晴らしいのは、
実写とドローイングを融合しており、画面を自由自在に動き回るココが本当に存在するかのように見えるところ。
ココのステージであるカンバスの中は、実写の世界と繋がっていて
本物の手に押さえつけられたり、
投げつけられた練り消しゴムにぶつかって動けなくなったり、
実写世界で行われている出来事にぴったりリンクしている。
ただのインクが、ペンによってココとして描かれ、カンバスの中で動き出し、
カンバスから飛び出して実写(現実)の世界へ。
カートゥーン過ぎない、ロトスコープのなまめかしい動きが、現実感をさらに深めている。
ただの絵に命が吹き込まれキャラクターになる瞬間を目の当たりにしながらも
ユニークな展開に笑わされる、とても楽しい一本。