『小蝌蚪找媽媽』特偉
「小蝌蚪找媽媽」特偉/中国/1961
中国の伝統技術、水墨画を巧みに使った、アニメーションです。
生まれたばかりのおたまじゃくしたちが、お母さんを探す可愛らしいお話。
淡く滲んだ色合い、勢いを感じる流れるような線、緩急のついた動き、
ひらひら漂うおたまじゃくしの尻尾や、金魚の尾ひれは、
本当に水中にいるような気持ちよさと美しさがあり、
水墨画との相性も抜群です。
ファインディング・ニモよりも50年近く前に発表された作品です。
『スキゼン』ジェレミー・クラパン
『スキゼン』ジェレミー・クラパン/フランス/2008
自分が世界から91センチずれてしまった男の話。
あの人ちょっとズレてるよね、なんてよく言うものですが、
本当にずれてしまったら。。。
視覚化すると確かにこうなる。
これがアニメーションの面白いところ。
よく考えたら、本当にこうなったら一大事ですが。
『桃太郎 海の神兵』瀬尾光世
「桃太郎 海の神兵」瀬尾光世/日本/1945
タイトルと時代から察する通り、戦意高揚映画なのだけれども、
とても興味深い作品。
主人公は昔話のヒーローである桃太郎です。
桃太郎は日本画の中に描かれる天草四郎のように、凛々しく丹精な顔立ちをしています。
しかし、桃太郎以外はみんな動物なんです。
動物たちは、のらくろや、フクちゃんのような、キャラクター化された可愛らしい描かれ方をしていますが、
アップになると、時折桃太郎のような凛々しい顔立ちになることがあり、その違和感や表情にドキッとする。(あの顔は、キメ顔なのかしら?)
また、全編通して風を感じることができるのが特徴的で、
セーラー服の襟が、桃太郎の前髪が、国旗がふわっとなびき、
常に心地の良い風が吹き抜けていきます。
個人的に好きなシーンは、中盤の「アイウエオ」の唄のくだり。
侵略した土地で現地の人に日本語を教える、という、
今思うと不謹慎なシーンだけれど、
ほとんど「ア・イ・ウ・エ・オ」の5文字だけで進むこののシーンは
戦意高揚映画とは思えないほどおおらかで、のどかで、平和に見えます。
しかし、心で楽しいと思っても、頭のどこかで道徳的にせつないと考えてしまうシーンです。
今朝、
「桃太郎 海の神兵」がカンヌで上映されたという記事を見て、
久々に見たくなったので、
実はコレ、短編じゃないんですが、是非。
『ムーミン パペット・アニメーション「ムーミン谷の春」』
『ムーミン パペット・アニメーション「ムーミン谷の春」』/ポーランド/1978年
児童文学、イラスト、グッズ、日本ではTVアニメのシリーズも度々作られ、さらにはムーミン王国なるテーマパークまであるほどおなじみのムーミン。
このパペットアニメーションのシリーズも、随分前にTVで見たのを覚えています。
(衛生アニメ劇場だったかしらん)
岸田今日子さんの独特な声と語り口調、
素材の質感による手触り感、動きのぎこちなさからにじみ出る暖かみ、
北欧らしい整えられた美術と色合い、
絶妙なバランス。
雲に乗って春の日の光に照らされて、気持ちいい〜〜〜
見ていると、心に余裕が湧いてきて優しくなれるような気がして
いつまでも見ていたくなります。
この時間が終わらなければいいのに。
最近では、小泉今日子さんのナレーションのバージョンもありますね。
『おとぎ話』プリート・パルン
『おとぎ話』プリート・パルン/1984/エストニア
Time Out(Priit PÄRN)
悪循環と現実逃避とめくるめく風刺の嵐。
たぬきくん(アライグマかな?ネコにも見える。)は、
無鉄砲すぎて全てが上手くいきません。
時間に追われて辟易しています。
混乱しすぎて時計のネジはショート、
時間が止まった瞬妄想の世界へトリップ!
突然始まるメタ表現や妄想世界にちょっとびっくり。
楽観的で能天気な音楽に調べにのせて延々続くたたみかけるような小ネタの連発に
楽しさ通り越してちょっと異常。
我に返ったたぬきくんを待っているのは、もとどおりの辟易する繰り返しの日常。
おとぎ話のお姫様は、いつか夢から覚めて現実にぶち当たる時が来るのです。
『ハンガー』ピーター・フォルデス
『ハンガー』ピーター・フォルデス/カナダ/1974
超初期の2DのGアニメーション。
ヌルッとゆっくり変態していくCGのおぼつかなさが、
心地悪さと不気味さを煽り
風刺や皮肉がたっぷり込められているアニメーションです。